文字書きの悩ましい所は目で分かるような進捗がはっきりとしないことだと思う。
イラストでいえば、下書き、ペン入れ、塗り、加工みたいな段階分けがしやすいんだけど文字書きってそういうのない。
精々プロット組む、書くの2工程くらい。
とはいえ、文章を書くにあたって「書く」という工程の中に含まれてる名前のない作業は多い。
例えば、語彙の検索。
言葉を調べる作業って案外難しいし時間が掛かる。
その時の自分の気持ち次第で気に入る語感が違うし、自分の頭の中にあるイメージと合致する表現かどうかを吟味しなきゃいけない。
こだわればこだわるほど、文章を書くことは時間が掛かる。
時間が掛かるくせに進捗が分かりづらいから、今日はここまでやった〜!という何か達成感みたいなものがどうしたって欠ける。
そんな「文字を書く」という行為の唯一と言っても良い明確な進捗確認方法は「文字数」だ。
そして、文字書きなら誰しも湧き出てくるのが「より長い文章が書けるようになりたい」という願望。
ある意味、目標のようなものかもしれない。
まず最初の明確な目標として誰もが夢見るのは「1万」という数字なんじゃないだろうか。
1万字って最初に書いた時、めちゃくちゃ達成感があるしなんだか感動する。
そんな数字なんだよね。
ところが、魅惑の1万字って誰にでも書けるもんじゃない。
それなりの訓練と、相応の我慢強さと、コツみたいなものがあると思っている。
本記事では、「魅惑の1万字チャレンジ」をしたいけど、なかなか書くことが出来なくて悩んでるという方。
あるいは、モチベーションが下がっているという文字書きさんへ向けた話です。
1万字チャレンジする前に、前提の話
まず、ごく当たり前のことを書くけど1万字書けたから偉いとか凄いとか、そんなことは一切ない。
どれだけ文字数を書けたのかなんていう情報は、あくまでも「自分がどういう地点を目指して文章を書きたいと思っているか」に対する結果や成果でしかない。
あなたの中にどんな目標があるのかによって「1万字書けた」という事実は100%にもなるかもしれないし、70%にだってなるかもしれない。
つまり、「1万字書いた」という事実はあなたの中でのみ有効性を持つ、あなたが自分を評価するための出来事でしかない。
もしくは、あなたが決めた目標に対する進捗度合いを示すものであり、あなたのためだけのモチベーション維持の指標でもあるかもしれない。
要は、どこまで行っても「自己満」であるということ。
自分がどれだけの文字数を書けたかどうかなんてことは、所詮その程度の情報でしかない。
だから「文字数マウント」とかいう概念は一切ない。クソ。
自分のモチベーションを維持するために、文字数という指標を使って目に見えるように記載しておくことを他人からどうのこうの言われるようなことじゃない。
いちいち匿名ツール使って「文字数マウントですか?」とか原稿頑張ってる文字書きに言うクソはツイッター閉じようね。
それから、自己満の世界に「褒めて」とか言うのやめよう。
何も偉いことじゃないし、凄くもない。
お前が尊敬してる作家さん、月にどれだけの文字数の原稿やってると思ってるんだ。
1万字なんて短編集の1話分だぞ。
自分の中だけでやった〜〜〜〜〜〜〜とか思うくらいで良い。
ちょっと口が悪くてすまんかった。
これは前提の話というよりただの愚痴に近い。
本当の前提の話は次から。
その話、1万字掛けてまで書くべき話なのか?
話によって適切な文字数というのがあると思うんだよね。
「1万字書きたい」という気持ちに囚われすぎて、話の内容が二の次になってるとしたらそれは本末転倒だ。
本来、文字数なんていうのは書きたいことをひたすら書いていたらいつの間にか1万字超えていた、という状況が健全なんじゃないかな。
文章なんて、書こうと思って書くものじゃないでしょ。
だから、もしあなたが1万字を書くことばかりに意識を向けているとしたら、一度立ち止まって欲しいと思う。
書いたことがない人にとってはそれだけ沢山のことが書いてあるんだと思うかもしれないけど。
私が本当に凄いと思うのは、少ない文字数にも関わらず読み応えや満足感を感じさせるような文字書きさんなんだよね。
分かりやすく言えば、俳句とか短歌がこれに当たる。
文字数稼ぐだけなら誰にだって簡単に出来るよ。
でも、俳句や短歌みたいな限られた文字数の中でいかに表現するかっていうのはめちゃくちゃ難しいんだ。
超訳なんていうのも色々出てるけど、一つの短歌に詰まっている詠み手の背景とか、その時の感情とかを解説したら漫画一本描けちゃうくらいのものが表現されている。
あの短い単語の連なりで。
私が文字数をどれだけ稼げても偉くも凄くもないって思ってるのはこういう理由。
表現をするということに文字数は関係ない。
その話にはその話が持つ適切な文字数が必ずある。
掛ける必要のない文字数を掛けても、なんだか無駄にテンポが悪い話が出来上がって終わり。
そして「話を書く」ということが二の次になった状態で書いた話は決まって面白くない。
そんなもん。
だから、1万字チャレンジをする前によく考えて欲しい。
その話、1万字掛けてまで書くべき話なのか?
1万字書くためのコツみたいなもの
どうやったら1万字書けるの〜〜〜〜〜??;;;;;と思ってる人へ向けて、私なりのコツみたいなものを書いておきます。
1万字を書くことに必要なのは語彙力じゃなくて「構成力」だと思う。
一度プロットを組んでみると良い。
10,000という数字の中で起承転結を作るって考えたら良いかな。
1万字の中に4つの段落を作るとなれば、1段落あたり2,500字だね。
ほら、もう書けそうじゃない??
もう少し深掘りしてみよう。
例えば、男女が出会うところから付き合うところまでを書くとする。
起承転結を作るとして、プロット例は以下。
- 起:「二人が出会う」
- 承:「二人が仲を深める」
- 転:「二人に試練がある」
- 結:「二人が無事にお付き合いする」
せっかくなので、各段落についてのちょっとした深掘りまで。
「起」の段落
二人が出会う段落では、二人の説明が必要になるね。
誰の視点かによっても書き方は異なるかもしれないけど、この話でスポットライトが当たる二人がどんな人なのかという解説が欲しい。
そして二人がどんな関係で、どんな立場で、どんな風に出会うのか。
これを2,500字で書くんだから、結構大変。
書き始めてみたら文字数が少ないって絶対思う。
「承」の段落
二人が仲を深めるエピソードを書こう。
使うかどうかはともかくとして、プロットを組む段階で2つか3つくらいのエピソードを挙げておくと良い感じ。
出会って、二人が恋に落ちる過程を考えてあげないと最後のオチに繋がらない。
例えば、一方の一目惚れでも良い。
一目惚れするにも理由があるはずだから。
そうなるに至ったエピソードを書いてあげる。
ここでどちらか一方だけが恋に落ちる過程を書いて、次の段落に進んでも良い。
あなたが組んだプロット次第だから、柔軟な起承転結を書こう。
「転」の段落
起承転結の中で、ターニングポイントを置くのが通説。
仲を深めた二人に転換期が訪れる。
お邪魔虫が出てきても良いし、ひょんなことから二人がすれ違いをしても良い。
何かしらの試練のようなエピソードを入れてあげると、収束する時に二人の絆が深まったことを読者も理解する。
「結」の段落
話全体のまとめ。
物語のクライマックス。
一番美味しいところだと言っても良い。
ようやく二人がちゃんとお付き合いをする。
どんな風に付き合うのか、その時にどんな場所で、どんな言葉で、どんな表情をするのか。
そんなことを丁寧に書いてあげると「めでたしめでたし」なお話が1つ書き上がる。
「続きを全裸待機!」と言われるような話だね。
次はお付き合いした後の二人のエピソードが書ける。
どうかな。
1万字という1本の話は2,500字の4つのエピソードから構成されていると考えると、案外大したことないな???って気持ちになるんじゃないかな。
これが、1万字の話を書くためのコツみたいなもの。
準備が整ったらあとは我慢強く文字数を稼ぐ
プロットを組んだら、あとはもうひたすら「書く」という作業に入るだけ。
こればっかりは黙々とやるしかない。
最初にも書いた通り、文字書きには分かりやすい進捗というものがないから我慢強く1万字を目指して話を書いていこう。
時々、文字数カウントを見てほくほくするくらいしか出来ないけどね。
作業している時のモチベーションは最初の時より上がるということはないので、維持することだけ考えると苦しくならないです。
それから、文字は書かないと微塵も進まないからツイッターは閉じようね〜〜^^
文字数を稼ぐためのちょっとしたコツ
最後に、1万字書くための考え方は分かったけど、文字数が増えません………という人へ向けたコツの話。
文字数を増やすためには、どうしても「語彙力」が必要になる。
でも、語彙力がなかったら無理なのかと言われたら決してそうじゃない。
これも最初に書いたことだけど、知らない言葉は調べるしかないんだよね。
そして、語彙力は言葉と出会わなければ増えていかないものだから、時々でも良いから言葉や表現を調べよう。
本を読むことも大事なんだけど、話を読んでる時ってなかなか語彙として蓄えようという気持ちが低下している。
文字書きが語彙力を増やすチャンスは、まさに文字を書いているその瞬間だと思う。
例えば「太陽が輝く」という表現を書いてみよう。
言葉を調べる時はその単語の「類義語」や「連想語」といったものを調べてみると良いです。
▼ 「太陽」の類義語、連想語
天道、お日様、日輪、烈日、初日、日の目などなど。
▼ 「輝く」の類義語、連想語
晴れる、キラキラした、一点の雲もない、抜けるような、光が差す、うららなどなど。
なんていうキーワードを見ながら、肉付けしてあげたら良い。
「太陽」と一言で書いても、空には色んな表情がある。
原文をそのまま使うとすれば「からりと晴れた青空にぽっかりと浮かぶ太陽がまるで私を見守っているとでもいうように輝く」とか。
「空の壁にぶら下がった日輪は自重に堪え兼ねて落ち掛けるものの、それでもなお懸命に地面へ向かって輝くことをやめない」とか。
太陽はどんな太陽なのか。
どんな輝きをしていて、それを見ている人はどうなのか、とか。
一言で書いてしまうのは簡単なんだけど、そこにちょっとずつ調味料を加えていく感じでじわじわ肉付けしていくと文字数は勝手に増えていきます。
とはいえ、これは私も意識してやり続けた結果できるようになったことなので、ある意味訓練をしていたと思う。
あとは気力の問題。
ここまでして書きたいと思うかどうか、全てはあなたのやる気次第です。
1万字で表現できることなんて案外少ない
登場人物の一つ一つの動作を丁寧に丁寧に書いていくと、文字数なんて簡単に増やすことができるんだよね。
例えば、誰かがご飯屋さんへ行ってご飯を食べて、お店を出るまでのそんな些細なことでもやろうと思えば1万字掛かる。
昼食一回分の描写を書くのに使ってしまうような文字数で、誰かの人生の一部を書こうとするなら、表現出来ることはあまりにも少ないと思う。
漠然と「1万字」って数字を追い求めてるとなかなかきついような気がするけど、考え方一つで全然気持ちが変わってくる。
やる気が出たら、あとは我慢強く書くだけだ。
大事なことだから何度だって書くけど、文字書きはひたすら我慢して書くことがもれなく全員に求められている。
文字数の進捗で自分のモチベーションを維持しながら、粛々とやるしかない。
そうして自分の中の細やかな目標を達成して、書くことが楽しいと思ってくれる人が一人でも増えると良いな〜〜と思います。
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